国内ハイグロース株は2020年に大きく上昇しました。

特に、コロナ禍で急激な業績成長を遂げたところならばともかく、SaaSのような安定的なビジネスモデルで、しかもそれまでと成長率がそう変わらないようなケースで大きく上昇するものが目立ちました。

業績成長率を上回る株価上昇は、評価が上昇しているということです。

そのようなケースが多いということは、それぞれに評価が上がる理由があったというよりも、それまでが割安だったか、全体に対して買う側の評価基準が変わったか、どちらかということになります。

そのあたりを考察してみます。

サマリー

・ 一般的な1年後の収益予想に照らすと強弁しても正当化は難しい

・ 3年後の収益予想をもとにして評価する向きが多くなってきたのではないか

・ 3年後は1年後に比べて不確実性の差でディスカウントされて当然

・ ITセクターの特性と低金利継続姿勢を背景に割引せずに評価しているのではないか

・ このような評価方法はいかにも粗っぽいもの・・


2020年、国内の高成長企業は集中的に買われ、
そうした企業群の上昇に牽引されてマザーズ指数は10月高値で19年高値比40%ほどという大幅な上昇を見せました。

今回は、市場が国内高成長企業のバリュエーションをどのように見ているのか?というところを極めてラフに考えます。

下図はマザーズ時価総額上位をはじめ、思いつく高成長企業の

❶ 1年後
❷ 3年後

それぞれにつき、
「直近の成長率がそのまま続くもの」
-との前提で粗利を求め、その35%を最終益と仮定してEPSを計算するという式でいわば ”仮想PER” を算出したものです。

(本データでは個別企業の分析は全く行っていないため個別企業に対する判断材料には全くなりえず、
あくまでも全体のイメージをラフにつかむための試算です)

上図を眺めて感じる「ラフなイメージ」は、

「今、市場が高成長企業のバリュエーションを判断する対象としている収益は、
❶(1年後)ではなく、❷(3年後)なのではないか?」

ということです。

❶(1年後)に照らした ”仮想PER” が余りにも高く、長期的な成長率をそのバリュエーションに相応な高水準に見積もっているとはとても思えないためです。

上図の高成長企業はSaaSを始めとするITサービス企業が中心です。

これらは、

・ マクロ経済環境との相関性が他業種に比して低い
・ SaaS&サブスクリプションのようなモデルは、業績の予見可能性を高めうる

といった特性を持つため、比較的業績の見通しは立てやすいと考えられます。

そして、2020年、極めて大きなファクターとして

「FRBは少なくとも2023年まで利上げしない見通しである」

という要素が加わったことで、3年後の業績予想となると本来は不確実性に鑑みてディスカウントされて然るべきであるところ、ディスカウントせずに株価に織り込んでしまおう、といったような判断に踏み切った・・というところではないでしょうか。

このような評価方法はいかにも粗っぽいものではあります。

FRBの低金利継続姿勢は永遠に続くものではありませんので、先々はこうした評価基準は是正されると見るのが妥当かと思います。

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マザーズは個人投資家、またその信用取引の影響が大きい市場であり、人気化した銘柄には機関投資家と思われるショートが積み上がることが多い印象があります。

しかし、本稿で取り上げた高成長企業群はかなり上昇した銘柄であってもそうした動きは軽微な水準に留まっています。

以下は、
・ 高成長企業群
・ 「それ以外の」マザーズ時価総額上位企業群(主に創薬ベンチャーが多い)
について、
「日証協の貸株残高」
(機関投資家のショート残高について、多寡程度はイメージ出来ます)」
を比べたものです。

創薬ベンチャーなどは株価水準に関わらず高水準にショートが積み上がっていて、信用買い残は積み上がっています。

これらと高成長企業群を比べると、その違いが鮮明です。

このことから、
「今のマザーズ時価総額上位には、何らかのバリュエーション評価基準引き上げがあったのではないか?」
と考えて本稿を作成するに至ったわけです。

<ディスクレーマー>
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