「投資信託の損」について考える

 

金融庁「個人投資家の多くが投資信託で損している!」

 

投資信託で損失を出す投資家が多い

 

少し前の話になりますが、日本経済新聞の記事で

「投信で損失、個人の半数 金融庁調査」(2018年7月)

という見出しが大きな話題となりました。

金融庁が銀行や証券会社、運用会社といった金融機関で投資信託を購入した個人投資家の運用成績を調べたところ※、実に約40%の投資家が含み損を抱えているという結果がわかりました。

2012年後半から始まったアベノミクスや世界的株高の恩恵で、この約6年の間に利益を得ている投資家が多いと思われていたところで、意外な結果となり大きな話題となりました。

そこで今回は、「投資信託の含み損」と、その原因について、紐解いて考えてみることにします。投資行動と投資信託の商品設計、おおきく2つの視点から考察してゆきたいと思います。

 

※「顧客本位の業務運営」
(別紙:投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果)参考元https://www.fsa.go.jp/news/r2/kokyakuhoni/202007/fd_kouhyou.html 

 

目次


1.投資信託を保有した経緯
・銀行で購入した
・証券会社で購入した
・遺産相続により保有している
・運用会社から直販で購入した
2.投資はタイミングの取り方が大切
3.投資信託の設計、6つの特徴から商品の性格を知る
 ①「毎月分配型」投資信託
 ②「カバードコール戦略」を取り入れた投資信託
 ③「通貨選択型」投資信託
 ④テーマ型ファンド(テーマ型投資信託)
 ⑤特定の新興国に投資する投資信託
 ⑥「ブル・ベア型」レバレッジ投資信託
4.投資信託の含み損には適切な対処が必要



1.投資信託を保有した経緯

投資信託を買うための選択肢のイメージ


投資信託の含み損について考えるとき、まず投資信託をどのような経緯で保有するに至ったのか、投資行動の側面から考えてみたいと思います。

・銀行で購入した
・証券会社で購入した
・遺産相続により保有している
・運用会社から直販で購入した

大きくこの4つのケースが考えられます。



・銀行で購入した

銀行の建物イメージ

 

銀行は、一般的に金融機関のなかでも最も信頼が高いとされ、保険や住宅ローンのみならず投資信託を銀行で購入するケースは多いと考えられます。銀行は預金者のデータをもとに勧誘を行い、店頭など窓口で説明を行い投資信託の販売を行っています。

金融庁の公表したデータによると、投資信託を銀行経由で購入した投資家の含み損率が証券会社や直販と比較的して高い結果であったことが傾向として明らかになりました。

その原因については、正式な取引担当者が不在のため販売後のアフターフォローの機会が少ないことが理由と推測されます。

私の見聞きした経験では、銀行と投資信託のお取引のあるお客様で正式な担当者がついている顧客は大口の預金者に限られ、多くの預金者には専属の正式な担当者が存在しない可能性が高いと考えております。

投資信託は、元本が保証されないリスク商品であるため、購入後のしっかりとしたフォローが必要です。変化する景気動向や市場環境、投資家の目的にあわせてケアを行う必要があります。例えば、投資信託が株式で運用されているとして、株価が明らかに割高に達しているのであれば売却を検討する必要がありますし、下落が止まらないときには状況を見極めて売却することで損失の拡大を防ぐことができます。

投資信託を購入した金融機関によって、投資家の運用成績に差異があるのは、購入後のアフターフォローの質に関係していることが考えられます。



・証券会社で購入した

証券会社の建物のイメージ


銀行と並んで証券会社で投資信託をはじめて購入した、という方も多いかと思います。
投資信託は銀行か証券会社のどちらかで購入するケースが大部分でしょう。証券会社と言っても、取引の仕方には大きく2種類があります。
ひとつはネット証券でのオンライン取引、それと正式な担当者がアドバイスを行う対面取引になります。取引における銀行との大きな違いは、対面取引の証券会社では基本的に正式な担当者が存在し、フォローやアドバイスを行う点です。定期的な担当者の転勤などがあるにしても、投資信託の購入後のフォロー体制が整っていると言えるでしょう。組織の変更や異動による定期的な担当者の転勤交代を好まない方は、私たちのような転勤、異動のないIFAを検討するのが良いでしょう。

どちらにしても、担当者の投資アドバイスの質が属人的なものであることは本質的な課題と言えます。



・遺産相続により保有している

バトンを渡す、相続のイメージ


遺産相続などがきっかけで投資信託を保有することになったケースでは、自らの投資判断で投資信託を購入したわけではないため、保有する商品について仕組みなど特徴を理解し、「知る」ことで含み損の理由が紐解けるかもしれません。
運用会社が定期的に発行する運用月次レポートや目論見書は、ネットで商品名を検索すれば、どなたでも簡単に読むことができますので確認することをおすすめいたします。
ポイントについては、第3項「投資信託の設計、6つの特徴から商品の性格を知る」も参考にしていただければ幸いです。


・運用会社から直販で購入した

 PCで株取引を行うイメージ


金融庁のデータによると、運用会社の直販で投資信託を購入した投資家の運用成績が最も優秀であったことがわかりました。
運用会社から直接投資信託を購入して含み損が生じている場合は、資金投入のタイミングや商品の特徴を見直してみることをおすすめいたします。
投資信託を直販で購入する方は、情報の収集など投資における判断を自己完結できる方が多いと言えるでしょう。



2.投資はタイミングの取り方が大切

投資のタイミング時間のイメージ


次に投資タイミングの面から考えてみたいと思います。
含み損があるということは、保有している投資信託が買付値段より、現在の値段が低いということを意味していますので、平均的な値段より高い値段で購入していたことが結果論として明らかとなります。

含み損となった原因を考えたとき、選択した商品への投資判断が問われる一方で、「投資タイミングが悪かった」、と言えばそれまでなのですが、投資するタイミング、リスクの取り方によっても運用成績は左右されます。

例えば、投資予算いっぱいの金額を一度のタイミングで投資することは、高いリスクを取った投資方法だと思います。

いま手元にある余裕資金500万円をファンド銘柄Aに対し一挙に満額投資した。
その後、投資信託は値下がってしまい、含み損失となった。当初から追加で購入する予定はない。

・投資信託はさらに値下がりを続けたので、当初の投資金額をもっと少ないものとすればよかった

・値下がりした投資信託は、その後一定の時間を経てから、値上がりし含み益となったが、もっとタイミングを慎重に計り投資を行えば運用成績はより良いものになったかもしれない。

あなたが投資をしようとしているタイミングは値上がりを始めるトレンドの入口かもしれませんが、値下がりするトレンドの岐路に立っているかもしれないのです。投資におけるタイミングの良し悪しは、結果でしかわかりません。投資タイミングを正確に見極めることはとても困難であると言えるのです。

このような投資タイミングの難しさを少しでも克服したいのであれば、積み立て買い付けや、分割買い付けを行うことで、軽減できることでしょう。ドルコスト平均法という手法を取り入れてみることをおすすめいたします。


3.投資信託の設計、6つの特徴から商品の性格を知る

6つのポイント、商品の特性


含み損の状態にある投資信託を保有し、その処遇に悩んだときは商品の設計や特徴をあらためて一度点検してみると良いでしょう。

商品を理解するうえで、欠かせないのは運用会社が発行している目論見書や月次レポートを確認することです。目論見書や月次レポートは運用会社HPから簡単に取得することができます。目論見書には、投資家が投資判断を下すために必要な情報が記載されています。

以下に挙げる6つの特徴は、運用成果のカギを握る重要な商品の性格となります。
目論見書の難しい説明をじっくり読まずとも、拾っておきたい大切なキーワードなので、ご自身の保有する投資信託と照らし合わせてみると良いでしょう。



(1)「毎月分配型」投資信託

毎月分配型投資信託のタイトルイメージ


決算を毎月行い、投資家(受益者)に対して純資産の中から毎月ごとに分配金を支払うことが大きな特徴です。純資産とは投資家から集めた資金となります。

投資信託の分配金は、企業の株式を保有した際に、商売の利益から支払われる配当金のような性格を持っています。しかし、毎月分配型投資信託の分配金は、特別分配金と呼ばれる仕組みで、必ずしも利益から支払われるものではありません。ですから、「特別分配金」と呼ばれています。保有している毎月分配型投資信託の分配金が利益から支払われているのかどうか?を確認する簡単な方法は、支払われた分配金に対して課税されているかどうかを知ることです。多くの方が選択している特定口座(源泉徴収あり)であれば、取引履歴から確認することができます。分配金に課税がされていれば、利益部分から分配金が支払われているということ、つまり運用が順調であるということが言えるでしょう。

逆にうまくいっていないケースでは、投資信託が値下がりを続ける最中でも分配金が支払われ続ける状態が挙げられます。

分配金の原資は純資産ですから、継続的に投資元本が減り続ける状態となり、運用効率が悪化します。運用効率の悪化により投資信託が思いのほか値上がりし難い状態となるかもしれません。また、運用がうまくいっていないケースでは、分配金の減額が決定されることも予想されます。特別分配金という分配の仕組みにより、運用の不調時に元本が減少しやすいため、純資産の絶対的成長が期待し難いことが特徴と言えるでしょう。



(2)「カバードコール戦略」を取り入れた投資信託

 カバードコール戦略のイメージ


カバードコール戦略とは、株式や債券、通貨などを保有しつつ、コールオプションを売る戦略のことで、値上がり益を放棄する代わりにその対価としてオプションプレミアムを受け取ることができます。
カバードコール戦略を行った場合、オプションプレミアムを受け取れるメリットがある一方で、株式や債券、通貨が値上がりする局面では利益が限定されるというデメリットがあります

このような基本的な性格を踏まえると、カバードコール戦略を取り入れた投資信託の基準価額は大きな値上がりが期待できない設計であることが言えます。マーケットの市況が悪化した際には、基準価額が値下がりする可能性があります。その後の基準価額の回復は鈍いものとなる傾向があります。

カバードコール戦略を採用した多くの投資信託の基準価額が低迷している現状をみても、資産形成を目的とした長期投資には不向きな商品であることが言えるでしょう。



(3)「通貨選択型」投資信託

通貨選択型投資信託のタイトルイメージ

 

投資信託のなかで「通貨選択型」と呼ばれる仕組みは、株式や債券などの投資対象となる資産に加えて、日本円以外の為替通貨取引を選択できるように設計されたものです。

例えば、選好される通貨として、ブラジル・レアル、トルコ・リラ、南アフリカ・ランド、メキシコ・ペソが挙げられます。これらの通貨は、新興国かつ高金利であることが特徴です。米ドルやカナダドル、豪ドルのような先進国の通貨も選択が採用されています。

通貨選択型の投資信託では、採用される通貨の金利が比較的に高いため、受け取るプレミアムを享受できます。しかし、その一方で、新興国が投資対象となる場合、多くのリスクが挙げられます。新興国への投資リスクとして、「政治リスク」「流動性リスク」「デフォルトリスク」など、カントリーリスクと呼ばれています。

アメリカや日本のような先進国とは異なり、新興国は相対的な信用が低い分、自国の通貨に高い金利プレミアムを付けることで、多くの投資を呼び込みたいと考えていますが、経済的に不安な要素が多いため、高金利には相応のリスクが内在していることが言えるでしょう。

通貨選択型の投資信託では、投資家が日本円で支払った資金が株式や債券などの資産とさまざま外国通貨に同時に投資されます。それぞれの資産の動向が投資家にとって都合の良い展開になること期待して投資を行います。しかし、複数にまたがる資産価格の動向を予想することは容易ではないため運用戦略が思惑通りにいかなければ、リスクの高い投資となるかも知れません。



(4)テーマ型ファンド(テーマ型投資信託)

テーマ型ファンドのイメージ


投資信託の世界には、その時々の世相を表すかのようなテーマやブームにフォーカスした商品が絶えず販売されています。そのような投資信託のことを「テーマ型ファンド」などと呼んでいます。

例えば、

自動運転技術を開発する関連企業を組み入れた
「自動運転関連株式ファンド」

AIによるさまざまなソリューションをテーマとした
「AI関連株式ファンド」

様々なモノとモノがつながるIOTをテーマとした
「IOT関連株式ファンド」

次世代の通信規格5G技術を取り扱う企業を組み入れた
「5G関連株式ファンド」

ARやVR技術開発を担う企業を組み入れた
「AR・VR関連株式ファンド」

デジタルトランスフォーメーションを推進するための活躍企業を組み入れた「DX関連株式ファンド」

先端ロボット開発に関わる企業を組み入れた
「ロボティクス関連株式ファンド」

(これらは実在する具体的な銘柄名を示しているものではありません。)


テーマ型ファンドはいわば、流行りものに乗るような投資の仕方と言えるでしょう。

投資を行うタイミングが良ければ、大きなパフォーマンスを得ることができます。しかし、一方で市場の間でブームが過ぎ去ったり、テーマの鮮度が落ちてくると、一転して効率の悪い投資となる可能性があります。人気に陰りが見えると、投資信託を売却してほかの投資先に資金を乗り換える投資家もいるでしょう。純資産も減少し、基準価額も伸び悩み、魅力は低下します。

このようなテーマ型と呼ばれる投資信託を保有し、含み損が気になる方は、運用会社が発行する運用レポートで足元の市場環境を確認するなど、テーマの点検を行ってみることをおすすめいたします。

テーマ型ファンドの特性を考えると、短期、中期的には優れたパフォーマンスを発揮する可能性は大いにありますが、長期的な資産形成を目的とした運用には不向きであるかもしれません。

 

 

(5)特定の新興国に投資する投資信託

新興国のイメージ、国旗


経済成長が著しい新興国に対して投資を行うタイプの投資信託では、通貨選択型投資信託と同様の投資リスクがあります。

中国やインド、ロシア、ブラジルなど、特定の国の株式や債券に投資することは「政治リスク」「流動性リスク」「デフォルトリスク」などのカントリーリスクを伴います。経済成長が高い国に投資をすることで高いリターンが期待できる一方で、日本が過去に経験したバブル崩壊のように、長期的な株式市場の低迷局面では気を付けなければいけません。
歴史的な視点で振り返ると、新興国の株式市場が長期的に上昇し続けることは難しいと言えるので、長期的な投資運用には注意が必要です。




(6)「ブル・ベア型」レバレッジ投資信託

 ブルベア型投資信託、レバレッジ投資信託のイメージ、牛と熊


ブル型・ベア型投資信託は、先物やオプション取引を活用することで、レバレッジを効かせて高い投資効果を目指す投資信託です。
日本では2倍~4倍のレバレッジの効いた商品に投資することができます。プレーンな投資信託と違い、短期間に高いパフォーマンスを発揮する可能性がありますが、その一方で予想に反する展開となった場合は、著しい資産の減少を招く恐れがあります。さらに、商品の設計上の弊害として「経年による資産の劣化」が上昇や下落に関わらず伴います。
「ブル・ベア型」レバレッジ投資信託の特徴として、資産変動の大きさとコストの高さ、長期的には効率の悪いリスクの高い投資信託と言えるでしょう。

 

 

4.投資信託の含み損には適切な対処が必要

 アイディア、まとめ、結論イメージ

今回は、投資信託の含み損という問題について、購入時に立ち返り考察することから始め、投資のタイミングや商品の特性を点検し、問題の原因を探りました。

問題の要素になっている可能性を順番に洗い出すことで、含み損を抱えている投資信託への対処アイディアが見つかるかもしれません。

投資信託には、購入時の購入手数料のほかに、保有期間に比例して掛かる信託報酬コストなどの負担があります。儲かっていても、損していても、信託報酬は発生しますので、長期的に明るい見通しが見込めない場合は、売却という決断が必要かもしれません。含み損の状態が一時的なものである可能性が高ければ、追加投資を検討するなど、前向きな発想もできるでしょう。

6つの特徴でも触れたように、投資信託の中には商品の設計上、本質的に長期の投資運用に不向きな商品も多く存在しています。長期投資には、複利運用の大きなメリットがあると考えればこそ、効率的な商品を選択する必要があります。

金融商品の投資アドバイスを行う私たちには、「含み損を抱えた投資信託」の対処についてのご相談が寄せられます。その取捨選択の判断基準となるのが、「長期投資に向きか?不向きか?」と考えています。以前、『児童手当で元手ゼロからの資産運用はできるのか?!』のなかで、例えば、全世界株式型の投資信託で運用した場合では、過去50年程度の年率リターンは平均で約6~7%であり、かつ、そのリターンは経済の成長率(GDP)をほぼ上回るという史実からも、全世界株式を長期的な運用資産の軸に据えることが望ましいと考えています。

長期的な資産形成や資産運用について何かお困りの方は、お気軽にお問合せいただければ、具体的な運用会社、商品についてアドバイスさせていただきます。お問い合わせをお待ちしております。

 

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<ディスクレーマー>

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